ナメオとボク

高校生の時にナメオと呼ばれている男がいた。
ナメオはちょっと気持ち悪い動作をするヤツで、
オカマ的なナヨナヨではなく、「ナメナメ」した動作をする男だった。
「ナメナメした動作」がどういう動作かを説明するのは難しいが、
「ナメナメしている」としかいいようのない、
名づけたヤツは本当にいいセンスしていると思う動作だった。


そのナメオはバカにされる、もっというとイジメられるタイプだった。
外見的には中肉中背、勉強は偏差値50(の学校だった)、
運動神経は平均以下で、顔的にも平均以下だったと思う。
性格は裏表がなく、思ったことをそのまま言うタイプだった。
そして誰とでも同じように話をし、いわゆる「クラスの人気者」とも
普通に話しをしていた。
だがそれが目立ってしまったのか、「ナメオ調子にノッてる」
と血の気の多い連中からはバカにされ(イジメか?)ていた。


その点、僕も気を抜くとすぐにバカにされる(イジメかな)タイプなので、
とにかく目立たないように、本音を言わず、イジメられないように
慎重に、無難に学園生活を送っていた。


そのおかげか、僕はイジメられないことに成功した。
クラスでも同じオーラの友達ができ、
学校帰りには友達とゲーセンに通ったり、カラオケに行ったり、
それなりに楽しい高校生活を送れた。
その点に不満はない。


ナメオは言動がどうしても目立ってしまうため、
やはりバカにされていたようだった。
しかしそんなナメオには彼女がいた。
その彼女もちょっと変わり者だったようだが、
今思うとそれなりにかわいかったかもしれない。
噂は色々流れており、彼女にマフラーを巻いてもらった
などを聞いたことがある。


僕はイジメられないことに成功し、
ナメオは彼女を作ることに成功した。


どちらがいいとか、そんなことは分からない。
ただナメオは本音を言う勇気を持っていた。
本音を言うことしかできない人間なのかもしれないが、
物凄く真直ぐで、自分に正直だった。
僕は自分を守ることに精一杯で、彼女を作るなど夢物語だった。


それから高校を卒業し、その後ナメオがどうなったか知らない。
その後僕は社会の一部になることに全力を上げ、
高校の頃と変わらないスタンスで31歳の今までやってきた。
本音を言わないため、敵は少ないが、会話が盛り上がることも
ほとんどない。
人の出来た方が回りにいるため、何とかやっていけている現状だ。


今、僕はリアルで彼女がほしいと願ってしまった。
リアルの彼女がほしいと気づいてしまった。
うやむやにしていた感情だったけれども、
リアルの女の子と恋愛してみたいと、思い出してしまった。


モテる努力など、したことがない。
いや、本音を言う努力を完全にサボっていた。
「いい天気ですね」などと世間話が下手なクセに
つまらない世間話ばかりしている。
こんなことで俺の気持ちが伝わるわけがない。
そもそも今の僕に本音があるのだろうか?
もう既に自分というものが消滅しているのかもしれない。
めでたく「社会の一部」になってしまっているのかもしれない。


僕はニコニコ動画ひぐらしMAD、
「メイド・オブ・サトコ」を毎日見ている。
こんな俺の本音を聞いてくれる女の子は存在するのだろうか・・・